しがない宇宙船

とりあえず入り口から入ってオフィスと書かれた部屋があったので入ってみることにした。
由羅「オフィス・・・ってことは事務室だよな？ここで仕事をすることになるのか・・・一体どんな感じなのかなっと」
ガチャ
俺はオフィスのドアを開いた・・・すると。
？？？「あら？ひょっとして・・・あなたが叶間由羅さんですか？」
そこには正直俺の周りにはいないようなショートカットの美人さんがいた。
由羅「へ？あ・・・は、はいそうですけど・・・何故俺の名前を？」
？？？「あ、これは申し送れました。私、今日から由羅さんの秘書をさせていただきます井上霧子と申します。以後よろしくお願いしますね」
そう言って霧子さんは優しく微笑んでいる。
由羅「秘書・・・ですか・・・？あ！こ、こちらこそよろしくおねがいします霧子さん！」
そ、そうか俺はこの団体の社長、なんだよな・・・やばいな。全然未だに自覚が無いから秘書って言葉に少し不思議そうな顔をしてしまった。
由羅「なるほど～、親父が言ってた敏腕秘書さんていうのは霧子さんの事だったんですね」
霧子「敏腕・・・かどうかはわかりませんが、由羅さんのお父様の秘書をしているのが私の先輩で、今回その先輩が私を推薦してくれて由羅さんの秘書を担当させてもらうことになりました」
親父の秘書さん・・・本当にありがとう、顔も名前もわからないけど俺はアナタにもの凄く感謝していますよ。
霧子「ところで、由羅さん。ここが今日から私たちが働くことになるオフィスですが・・・デスクやPCの配置は今の感じでいいですか？」
そういわれて俺はオフィスを見回してみた。危ない危ない、オフィスより先に霧子さんばっかり見てるってどれだけだよ。
ざっと見回してみたところ学校の教室をもう一回り小さくしたくらいの広さだ、入ってすぐ右手にデスクがありその上にPCが置いてある。
あとは何の本かはわからないが奥に本棚が２つ程あって本がびっしり並んであるな。そしてまた奥にデスクがあり、PCが置いてあって、お客さんが来た時用？のつくえとソファが真ん中にある感じだ。
由羅「配置は全然文句ないんですけど・・・何ていうか・・・想像していたより狭くて、こう・・・貧しいかんじですね」
と、俺は苦笑いしてしまう。でも、それは許してほしいだって・・・本当に思っていたより貧相なんだもの！
霧子「うふふ、ここからこのオフィスを・・・いえ、団体を大きくして行けるかどうかは社長の腕の見せ所ですよ？期待してますからね、由羅さん」
まいったな・・・正直１年しない間にこの団体潰れて元の生活に戻れる、とか考えてるなんて言えないな～orz
ま、まあこんな美人さんに期待してる何て言ってもらえたんだ、がんばってみるか！・・・何すればいいかわからないけど・・・。
由羅「あ・・・社長が絶対言っちゃいけない台詞なんですけど、俺何したらいいか全然わからないんですよね・・・親父が最初は秘書さんに助けてもらえって・・・」
いきなり無様なことだが俺は困りつつ恥ずかしそうな表情で霧子さんに聞く。
霧子「そうですね・・・それでは由羅さん、仕事のことについてお話しましょうか」
笑顔で答えてくれた・・・優しい・・・優しすぎるよ霧子さん！！
霧子「それではまず我が社の予算を見ておいてもらいましょうか・・・こちらが資料になります」
俺と霧子さんはソファに腰掛け資料を見る。
由羅「うっわ！？結構・・・っていうかかなりの額じゃないですか！？」
霧子「はい。会社が安定するまでは色々入り用になるだろうから、と天馬様が少し多めにこちらに予算を組んでくれているんです」
少し多めでこの金額か・・・？確かに一緒に暮らしてて親父の金銭感覚が狂いまくってるのは俺も感じていたけど・・・改めて金持ちなんだと実感するなぁ。
霧子「まあ、お金の使い方はまたゆっくり説明するとして・・・次に、これがチェックしておいてほしいプロレス団体です」
そういうと霧子さんはまた新たに資料を出してきた。
由羅「日本女子プロレス・・・親父の団体ですね」
霧子「はい、年商１億超えと言われている現在女子プロ団体では１位２位を争う地位にいらっしゃいますね。現在グラビアや音楽関係でも活躍していらっしゃるマイティ祐季子選手を筆頭に活躍していますね」
マイティ祐季子？ああ・・・そういえば最近TVとかでもよくみる新咲祐季子さんのことか・・・そういえば親父に頼んでサイン書いてもらったこともあったな。
しっかし１位２位を争っている団体の社長の息子が団体設立か・・・どう考えてもお遊び企画だよなぁ。
俺は頭の中で自嘲していた。
霧子「次はこちらになります」
由羅「JOE？」
これは・・・どこかで聞いた名前だな。
霧子「この団体が天馬様の団体と同等、あるいはそれ以上の規模の団体になります」
ああ、そうだ親父が「JOE氏ね！」とか言ってたあの会社か。
霧子「こちらはビューティ市ヶ谷こと市ヶ谷麗華選手を筆頭に活躍されていますね」
由羅「市ヶ谷麗華！？全日本柔道王者でお嬢様の、あの市ヶ谷麗華！？」
彼女もよくTVやCMにでているよな・・・なんか・・・俺ほんとにとんでもない業界に足を踏み入れてしまったんじゃ・・・。
そしてその後、他の団体も数個紹介してもらった。
その団体にもそれぞれ良く名前を聞く人物が選手として活躍していることを知った。
由羅「・・・・・・・・・・・・・・」
霧子「どうしました？由羅さん」
俺はあまりにも有名人のラッシュにほぼ放心状態になっていた、そう恥ずかしい話だが怖くなったのだ。
由羅「あ、いや・・・俺、本当にこんなことに足踏み入れていいのかな～と、おもって・・・不安に」
霧子「安心してください、由羅さん。その為に私がいるんですから！」
由羅「霧子さん・・・」
普段なら男が女に言う台詞なのに・・・俺、みっともないな。
由羅「そ、そうですよね！社長の俺がこんな弱気じゃだめじゃないかあああぁぁぁ！！霧子さん、次にやることはなんですか！？」
気合いが入ってはいるがやっぱり何していいかわからない俺であった。
霧子「とりあえず・・・女子プロ団体なので選手の方がいないことにはお話しになりません、ですので選手を獲得しましょう」
由羅「選手の獲得・・・ですか？でも、一体どうやって・・・」
霧子「新人テストを行うのです」
新人テスト・・・何だか難しそうだな・・・。っていうか俺は本来、人をテスト出来るような人間じゃないよ・・・？とか考えてると俺のその思考を読み取ったのか霧子さんが
霧子「心配しないでください、新人テストには一応私たちも参加しますが基本的には天馬様の所の方達が来てくれてテストを行ってくれますので」
由羅「は、はぁ・・・そういう事なら大丈夫そうですね」
助かった～・・・多少プロレスは見てるけど新人の人達を審査するなんて事は俺には到底無理なスキルだからな～。
霧子「ですが・・・」
由羅「はい？」
霧子「最終的にこの団体に入れるかどうかの判断は社長が行うことになりますので、それは覚えておいてくださいね♪」
?・・・そ、そうですよね・・・見てるだけじゃあダメですよね？
由羅「わ、わかりました・・・。それでその新人テストって言うのはいつ行うんですか？」
霧子「今月ならいつでも大丈夫ですよ？日にちさえ決めてくれれば天馬様にご連絡してその日にテストしてくれる人材を送ってもらうように手配済みですから」
ホントしっかりしてるなこの人・・・ひょっとしたら地獄に仏ってこのことかもしれないな・・・。
由羅「それじゃあ・・・そうだな～・・・う～ん・・・う～ん・・・お腹痛い」
霧子「え？」
滑った・・・。
由羅「それじゃ２日後にお願い出来ますか？」
霧子「わかりました。この団体が出来ることはTVとかで流れていましたし、今募集をかければそこそこ来てくれると思いますよ」
そう言って霧子さんは親父に電話しはじめた。
プロレスラーになりたい女の子達か・・・一体どんな子達が集まるんだろう？
でもマイティ祐季子さんや市ヶ谷麗華さんみたいにかわいいくて奇麗な人達もいるくらいだからちょっとどうしても期待してしまうな。
霧子「それでは由羅さん、２日後の４月１２日に新人テストを行うことになりましたので」
由羅「了解です。４月１２日か・・・楽しみだけど緊張するな～」
霧子「そうですね。それでは社長次の説明に入らせていただきますね」
こうして、新人テストを行うことになったダメ社長俺・・・。
新人テスト・・・何事も無く終わればいいな・・・と思う今日この頃だった。