しがない宇宙船

リコナとイブキは総務室に到着した。
総務室とは、ニア・ギツエの最高責任者である総務、ドゼ・リカドコグのいる部屋の事である。
リコナは総務室のドアを軽くノックした。
「リコナ・セントとイブキ・ウル両名、参上しました。」
「うむ。入りたまえ」
「失礼します」
イブキとリコナは総務室に入室した。すると幅２mほどの机で大柄の老人がカタカタと急がしそうにマウスをクリックしている何とも奇妙な光景がそこにはあった。
「あ・・・あの？ドゼ総務？」
「ちょっと待っててねイブキちゃん、もうすぐで倒せるけん」
「はぁ？」
待つ事２分、何やら老人のマウスのクリックが止まった。
「ふぅ～・・・ないわー。このボス強化されすぎじゃろいやマジで、バージョンアップやけんてやりすぎどれだけ高額回復アイテム使わされないかんのよ？TONGA（この世界のゲーム会社の１つ）氏ね」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
リコナとイブキは呆れたような表情で立ち尽くしている。それに気づいたのかドゼ総務も慌てて場の雰囲気を変えようとする。
「あ・・・え～、ゴホン！うむ、よく来たな2人とも、実は機動課に頼みたい仕事があるんじゃが、何分機動課のメンツが今ほとんどではからってての、今フリーな2人に来てもらったんじゃが」
「頼みたい仕事？」
「うむ。しかもかなり急ぎの仕事じゃ。」
「だったらオンラインゲームやってる場合じゃないんじゃ・・・」
イブキが呆れて発言する。
「いや、すまなんだってイブキちゃん、いやいや、2人が来る頃には終わっている予定じゃったんじゃ、それが・・・ホラ・・・なんか弱かったボスがえらい強くなっててのぅ」
「ド・ゼ・総・務？」
イブキが威圧的な声を出す。
「は、はい・・・すいませんでした」
と、平謝りするドゼ総務。
「い・・・いや～しかし今日もイブキちゃんはかわいいのぅ・・・リコナ君も姉のツシイちゃんは元気にしとるかの？」
「ツシイは特別任務でここ２ヶ月ほど帰って来てませんね・・・というかはやく急ぎの仕事の説明を聞きたいのですが？」
「フォフォ、相変わらずのツンデレ具合じゃのうリコナ君、ウム、それでは説明させてもらうとするかのぅ・・・まあおそらくは2人とも察しはついていると思うが、世間では通り魔だと騒がれておる事件の事じゃ」
「と、いうと？」
「ウム、本日午前７時３０分頃、セントラルポイント付近で７人もの善良な市民が殺されていた。これはこの事件では初めての死亡事件じゃ。」
「ええ、そうですね」
「2人も知っての通り、この事件はどうやら人が起こしておるものではない。傷口がどうにも不可解なんじゃ。そしてそれ以上のことがわかっていないまま結局、今回の死亡事件まで起こってしまった。これではニア・ギツエの面目がたたん。じゃが！！」
ドゼ総務がなにやら大声をはりあげた。
「じゃ・・・じゃが？」
「今回はたまたま事件現場の近くにいたニア・ギツエの情報課のものが犯人を追跡していたのじゃ」
「え？ということは犯人はもう捕まったのですか」
「ウム、ここからがお前さんたちに頼みたいところなのじゃ」
ここからが・・・ということは犯人はまだ捕まっていないらしい。リコナは少しめんどうなことになりそうな気がしながら説明の続きを聞いた。
「情報課の者の連絡では場所は現在も特定したままなのじゃが、なにぶん犯人とおもわれるものが人の形をしていないらしい・・・獣のような形をしていた、とのことじゃ」
「獣のような形ですか。なるほど・・・情報課の人達は戦闘能力が皆無の人達が多いから捕縛しようとして被害がでてもいけない、ということですね」
「ウム、そういうことじゃ、そこで機動課のリコナ君とイブキちゃんに行って来てもらいたいのじゃ。はい、これデジタルマップ」
「了解しました。それでは現場に急行します。」
「あ、イブキちゃんおでかけのキスは？」
バタン
総務室のドアが閉まった。
「え？・・・放置？」