しがない宇宙船

リコナ、イブキは廃工場に足を踏み入れたが不気味なくらいに工場は静まり返っていた。
外の小鳥のさえずりが聞こえてくるほどである。2人はいぶかしげに顔をみあわせた。
「一体どういうこと？・・・獣型の影どころか物音一つ聞こえてこないわよ？」
「う～ん。まあ、とりあえずもうちょっと奥まで調べてみよう」
二人は工場の更に奥へと足を踏み入れた。だが、やはり物音一つしない。だが、二人はたしかにそこにある殺気を感じ取っていた。そしてその殺気は確かに距離を縮めてきている。
「・・・・・・。」
二人もそれに気付き物音一つたてずにその殺気を待ち構えている。気配から察するに相手はどうやらリコナたちの背後にいるようだ。
それから２分ほどの沈黙の後、殺気が一気に距離をつめて来た。さきほど静けさは嘘のように激しい勢いを感じさせる足音が聞こえて来る。
「リコナ！！」
「わかってるよ・・・」
後ろから襲いかかって来た殺気の攻撃を二人は難なくかわし、その殺気の持ち主と向き合う形になった。
「こいつは・・・」
二人の視界に映った殺気の正体はやはり情報通り、人の形をしていなかった。
「狼？・・・ううん・・・それにしては姿があまりにも・・・」
イブキが唖然としている。しかし彼女があぜんとするのも仕方が無い事かもしれない。たしかに獣型の生物ではある・・・が、その生物の姿は例えるなら狼に似ていた。
「なるほど・・・。確かに殺傷能力が高そうなヤツだね・・・でも・・・これってなんて生き物？」
リコナも少し驚いている風だ。
狼に似ているものの、口の牙は２本だけ５０cm以上はあるかという長さのものが生えて、尾は魚のウロコを尖らせたような感じのものがびっしりと生え揃っている、爪は分厚く２０cm以上はありそうだ。そしてその目はとても充血していてその生物がいかに凶暴かをあらわしているようだ。
なによりその体長は２m以上はあるだろう。
「この巨体であの俊敏さ・・・今日はふしぎなものをみれたな」
「いやいやいや！感心してる場合！？」
そうこうしているうちに狼のような生物はリコナ達に２撃目を与えようと再び突進する体勢をとる。
「グゥゥゥゥルルルルルルルル！！」
「どうやら僕達の事も殺す気満々みたいだね」
「ええ・・・でもこっちも仕事だしね、こいつを倒さない以上は帰れないわ」
「じゃあ、いつもどおりさっさと終わらせようか」
「グゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥルルルルウルルルルルルル・・・」
リコナとイブキは狼のような生物と対峙した。